朝倉会長  2020年ごあいさつ

渋谷駅スクランブル交差点の賑わい,ラグビーワールドカップの興奮と,日本油化学会年会改革

「青信号1 回当たり約3,000 人」,これは最も人が多い時間帯に渋谷駅スクランブル交差点を渡る人数の概数だそうです(出典:渋谷センター街ホームページhttp://center-gai.jp/info/ より)。多種多様な人々が多種多様な目的で勝手に集まってきて,いつも賑わっています。「交差点」,これは北本大委員長の下に構成された将来構想委員会から2017 年に提言された,日本油化学会改革ビジョンの締め括りの言葉です。このビジョンにしたがい,現在,日本油化学会は年会改革のプランを進めております。「日本油化学会の年会が幅広い分野に広がった幅広い目的の参加者が雑多に集う交差点となる,すると,そのカオス的混沌とした状況下において,それまでは思いもつかなかったような新しい連携,新しい技術,さらには新しい学問体系までもが創発してくる」,そんな年会改革プランです。

その第一弾として,昨年度は残念ながら台風で中止になってしまった「主題シンポジウム:シーズとニーズのマッチング」が,本年度年会では,後藤直宏実行委員長のリーダーシップの下で開催されました。年会企画運営委員会の井村知弘委員長のリードの下,大学の研究者は研究シーズと学生の育成方針,企業の研究者は研究ニーズと求める人物像について,それぞれ紹介しあい,産学連携ならびに人的交流の推進を目指すものでした。約2時間半のシンポジウムの間,会場は大いに盛り上がり,またポスター会場に設置されたブースも随分と賑わっておりました。今後,2020 および2021 年度に纐纈守実行委員長ならびに西脇永敏実行委員長を中心としたメンバーで,岐阜および高知で開催される年会が,産学連携推進のための交差点」としてどのように進化していくか,大いに期待されます。

さて,2019 年はラグビーワールドカップで日本全国が大いに盛り上がりました。ただ,残念なことが一つ,日本チームは代表31 名中24 名が日本人選手でしたが,実際は16 名あるいは15 名しかいないと思っているのが平均的な日本人のようです(16 名と思うか15 名と思うかは,名前のリストを見るか,顔写真のリストを見るかで決まってくるようです)。しかも,外国人選手7 名中3 名の最終学歴は日本の高校あるいは大学です。このような状況下で思い出したのは,1997 年9 月に1 年間の米国でのサバティカルから帰国し初めて出研した時の出来事でした。1 年振りに,或る言葉を聞きました。その言葉は「留学生」,すなわち外国出身の学生を日本人学生と区別する言葉でした。その当時から,米国のいわゆる研究大学とみなされる大学大学院では,外国出身者の方が生粋の米国人よりも多く,彼ら彼女らは外国出身であるからといって区別されることもなければ,逆に特別に扱ってもらえることもありませんでした。

そして,年会改革の2 つ目のコンセプトは「多様なバックグラウンドの研究者・技術者の交差点」です。まさにBRAVE BLOSSOMS のように,出身地や育った環境に違いがある多様な人々がそこに集い活躍したいと思える集団が創発してくる,そんな年会へと進化していければと思っております。その導火線として,2022 年に日本油化学会創立70 周年記念事業の一環として釧路市で開催される第2 回世界オレオサイエンス会議では,招待講演の数は僅かに留め,「選抜講演」を多く執り行うこととしました。日本国において「国際化」というと,これまでは世界の第一人者と思われている人や組織に接し,それを真似て同様な成長を模索するという考えが主流で,そのために国際会議では多くの著名人による招待講演があったように思います。それに対して,世界の隅々からの目をギラつかせた応募者の中から,よりフレッシュでより重要な一次情報を提供してくれそうな研究者を選抜し,講演してもらおうというのが「選抜講演」です。簡単に言えば,「ジーコやイニエスタをこの地によんで,色々と学ばせてもらおう」という発想ではなく「リーチ マイケルや松島幸太郎のように,この地を選び,この地で活躍し,この地を活性化させる人材が育つよう,種を蒔こう」という発想です(そこまで知識が深くなく,異なる競技を例に出してしまい恐縮です)。

なお,2019 年の年会中の宇山允人氏による進歩賞講演で,良い言葉を聞くことができたと感じています。それは,「過去の成功体験は,時として将来の発展の足枷になる」です。常に,「交差点」としての素晴らしい進化を意識して,年会改革を継続していく必要があると考えておりますので,ご協力の程,何卒宜しくお願い申し上げます。

末筆ではございますが,新年,明けましておめでとうございます。西暦2020 年,令和2 年,56 年振りに夏季オリンピックが日本にやってくるこの1 年が,皆様にとって素晴らしい年となることをお祈り申し上げます。

朝倉会長  2021年ごあいさつ

変わっていくべきこと、変わらずにいるべきこと

「こんな時代に−蛮勇を奮わず,正しく怖れ,使命を果たす−」,これは昨年11 月に,当初の予定を変更してWeb 開催された日本油化学会第59 回年会のキャッチフレーズでした。研究成果を発表する際,学術誌への論文掲載はとても重要で,特に大学においては,査読付きの論文がどれだけ掲載されたかで人事に関わる評価が決まり,また大型の公的資金の獲得につながったりもします。しかしながら,年会のように口頭やポスターで研究成果を発表する機会が減少したかというと,そのようなことはなく,例えばセミナーやシンポジウムなどにおいて,招待者による講演に加えて一般参加者が発表する機会を設ける試みがなされるなど,逆にむしろ増えていると感じています。これは,字面だけからでは読み取ることのできないノウハウや,実験条件の設定に至った裏話など,実は本当に重要な情報の交換が,Face-to-Face のコミュニケーションにより可能になるからであると感じております。

しかしながら,そのFace-to-Face のコミュニケーションをとることが困難な「こんな時代」になってしまいました。本年,そしてそれ以降の年会は,今のところ対面形式での開催を検討しておりますが,そのことが確約できているわけではありません。また,セミナーやシンポジウムなどの開催方針も全て未定です。それでも,オレオサイエンスに関わる研究や開発を進め,世の中を良い方向へ先導する「使命を果たす」のが我々の役割です。昨年,急遽,年会の臨時実行委員長の役を務め,皆様にコロナ禍下「蛮勇を奮わず」にリモートで参加いただくWeb 年会を開催しましたが,通信およびコンピューター環境についての不安から,全ての発表や講演をオンデマンド形式とし,また質疑応答は筆談形式としました。したがって,臨場感が物足りなかったことは否めません。もしも,本年以降もWeb 開催あるいは一部Web 開催を検討するならば,如何に臨場感を高めていくかが重要であると感じています。仮想空間などについては,日進月歩の技術革新が進んでいるようで,その様子を注視し,その利用の可能性について積極的に検討していくことは大変に重要と思います。

一方,年会のWeb 開催を余儀なくされたことで,逆にあらためてWeb 活用の有効性を認識することもできました。聞きたい発表の時間帯が重複する問題が解消されるだけでなく,遠方での開催であるがために参加を躊躇することがなくなるのは大いに意義あることでした。昨年正月の巻頭言において,国際化の重要性を学際交流の重要性と共に訴えさせていただきました。ところが,Web を利用すれば,地球の裏側からでも隣室からと同様にアクセスできます。よく考えてみれば当たり前のことに,改めて気付かされました。そして,地球の裏側からでも簡単に参加できるようになれば,日本国内で開催されていても,日本人ならば日本語発表が普通で英語発表は特別ということはなくなり,ただ単になるべく多くの方々に自分の発表を聞いて欲しいと思い,英語で発表するのも普通になるかもしれません。

これから「変わっていくべきこと」,色々あると思います。特にIT の進歩に柔軟に対応すること,そして「変わらずにいるべきこと」であるFace-to-Face のコミュニケーションを大切にする姿勢を,現実により近い形でリモートで実現し,本当に重要な情報を交換しあいオレオサイエンスを発展させていくことが必要であると感じています。もしも,対面形式の年会やシンポジウムを問題なく開催できる時代が来たとしても,Web 形式での参加も併設するような運営も検討すべきかと思います。ただ,新しいことに対しては予期せぬ問題が潜んでいる可能性が多分にあります。今回の新型コロナウイルス,重要なのは科学的根拠に基づいて「正しく怖れ」,自身ならび周囲の感染を防ぐことです。これは,決して「適度に怖れる」というような感覚的なことではありません。今後本格的なWeb 活用を目指すなら,コンピューターウイルスやセキュリティーの脆弱性などといった技術的な問題にとどまらず,例えば論争の過度な過熱や誹謗中傷など社会的な問題も発生するかもしれません。そのような場合も,感情論ではなく社会・人文科学的根拠に基づいてきちんと対応していくことが大変に重要と思います。
では,末筆ではございますが,新年,明けましておめでとうございます。西暦2021 年,令和3 年が,皆様にとって素晴らしい年となることをお祈り申し上げます。「こんな時代に」なってしまった今,自然科学的根拠,さらには社会・人文科学的根拠にも基づき「蛮勇を奮わず」,「正しく怖れ」,「変わっていくべきこと」と「変わらずにいるべきこと」を見極め,オレオサイエンスの研究者・技術者として「使命を果たす」を実行していこうではありませんか。

感染症に負けない栄養と成分 6/28〜7/2

関東支部主催 第 1 回油化学セミナー 定員300名

講演プログラム・申し込み>>こちらをご覧ください。

講演:6月28日(月)10:00〜7月2日(金)15:30
説明音声付きビデオのオンデマンド配信

質疑:7月 2日(金)15:30〜17:30
各講師によるウェブ会議

※充分、通信速度が確保される状態でご視聴下さい。
※ご質問は講演視聴中にチャットにてお寄せください。

参加費:個人会員5,000円,法人会員7,000円,一般10,000円,学生2,000円
申し込みが300名になり次第締め切ります。

第67回定時総会で新役員が選任されました 4/22

定時総会で新役員が選任されました。令和3年度役員と委嘱職務を紹介します。

承認された令和2年度事業報告と決算案ならびに報告された令和3年度事業計画と収支予算書を掲載しました

 

■第67回定時総会
日 時 : 4月22日(木) 13:00〜16:00
場 所 : 油脂工業会館9F会議室
目的事項:
(1)報告事項
➀令和2年度事業報告・監査報告
➁令和3年度事業計画
➂令和3年度予算計画
(2)決議事項
➀令和2年度決算承認・監査報告
➁令和3年度役員選任
➂定款 総会(書面による議決権の行使)の一部変更

油脂及び界面の分析・イメージングの最前線 6/10

東海支部 油化学セミナー 2021

テーマ:油脂及び界面の分析・イメージングの最前線

会期:6月10日(木)13:00 〜17:25

場所:オンライン開催

参加費:正会員・法人会員・協賛団体会員:10,000円、学校・官公庁:5,000円、会員外:14,000円

(事前振込のみですのでご注意ください)

詳細はこちら>プログラム

AOCS Annual Meeting, May 3-14 2021開催

Invitation for JOCS Members:

We are happy to announce that the AOCS Annual Meeting & Expo will be held entirely online from May 3-14, 2021.

There will be three streams with more than 12 hours of live presentations and interactive discussions each day. The conference will include many networking and social events. Session chairs and organizers from around the world warmly invite JOCS members to participate and to share their research results with our global audience.

COVID-19 restrictions on travel and makes it difficult to meet with international colleagues – but our online conference is a ‘silver lining in the clouds’. Without issues of travel costs and restrictions we can discuss our research and innovations with a larger audience than ever before.

Please submit your abstract at the meeting website before January 15 to be included in this event.

The conference includes more than 80 sessions in the following areas:

  • Analytical Division

Sessions on contemporary analysis of lipid oxidation products; authentication of high value oils; rapid and high-throughput screening methods; analysis of trace contaminants; and emerging technologies to characterize and quantify lipids in oils, fats, biological and food matrices.

  • Biotechnology Division

Sessions on enzymatic and microbial conversion of plant-based oils into industrial chemicals; breeding and biotechnology for improving plant proteins; plant and algae lipid biotechnology and genomics; development of biobased surfactants and biorenewable polymers.

  • Surfactants and Detergents

Sessions on interactions of surfactants at solid surfaces; biobased surfactants; personal care and cosmetic formulations; next generation ingredients and regulatory issues.

  • Edible Applications Technology Division

Sessions on fundamentals of fat crystallization; phase transition and interfacial phenomena in complex food systems; edible applications of plant proteins and manipulating fat for plant-based product development.

  • Industrial Oil Products Division

Sessions on biofuels; green chemistry and oleochemicals; biorenewable polymers and new uses of glycerine.

  • Lipid Oxidation and Quality Division

Sessions on contemporary analysis of lipid oxidation; evaluating antioxidant effectiveness; studying interesterified fats and oils and new oil products; and lipid oxidation mechanisms

  • Phospholipids

Sessions on novel phospholipids; pharmaceutical, functional and edible applications of phospholipids; processing and fractionation

  • Health and Nutrition Division

Sessions on essential fatty acids; cannabinoids and terpenes; lipid oxidation consequences to health and nutrition; and all aspects of experimental nutrition, physiology and biochemistry in humans and animals.

  • Processing

Sessions on new and emerging processing technology; food safety; cannabis and hemp processing; processing to enhance bioactive ingredients; and renewable fuels.

  • Protein and Co-Products

Sessions on protein-based hydrocolloids; functionality of proteins in food and interaction with other food components; breeding and biotechnology and emerging sources of protein; non-food applications of proteins