界面実践講座(11/1終了)

日 時:令和5年11月1日(水)~23日(木)
対象:フレッシュマンセミナー等で界面科学の基礎を習得後、製品開発のための実践的な知識を求めている方におすすめの講座です。

開催方法:

・予習用ビデオの配信:  11月1日(水)~8日(水)

・ライブ講演の開催:      11月8日(水)~9日(木)

・ライブ講演の録画配信:    講演後から11月23日(木)

詳細と申込み>こちらをご覧ください。

2023年新年のご挨拶 北本大 令和3~4年度会長

“未来は予測できないけれど、

まずは一歩”

新年、明けましておめでとうございます。私の干支は、(風貌からは想像できないかと思いますが)「卯」です。ついに6巡目を迎え、人生の後半戦がスタートします。諸先輩が常々言われるように、社会人になってからここまではあっという間の出来事。私の場合、「あくせくと、一心不乱に走り抜けた」とは言い難く、色々な方々と楽しく交流しているうちに、世の中が淡々と進んでいったとう感覚です。

これまで各種の研究開発や対外的な活動に携わりましたが、結局のところは、「オレオサイエンをベースに、快適生活を支える新しい技術・製品の開発」に取り組んできたと言えます。特に、「バイオ界面活性剤」に関する研究は、当初の想いに反し、ライフワークになってしまいました。界面化学に素人の私が、黎明期のバイオプラスチックの研究に刺激され、この研究を開始したのは1990年よりも前で、まだまだ石油化学製品が全盛の頃。同時に、各メーカーが不断の努力のもと、合成界面活性剤の環境負荷の低減を大きく進めていました。そのため、当学会の諸先輩の方々からは、「そんなバイオ素材は不要」、「ニーズがない」、「コスト的に話にならない」等々、随分と激励を頂きました。

しかし、今世紀になってから少しずつ潮目が変わり始め、2010年頃からは「循環型社会」や「SDGs」は常識となり、特に欧州ではパーソナルケア製品類に関してはかなり早い時期から、「ボタニック」や「オーガニック」が前提とされてきました。そして数年前の海洋プラスチック問題が大きなトリガーとなり、現在では化学品における原材料転換や「サーキュラーエコミノー」が、全世界で最重要な課題となっています。

私達が始めたバイオ界面活性剤に関する研究は、時代の追い風や基礎技術の進歩と相まって、企業との長期間の連携を経て製品化・事業化へと繋がりました。当初は、化粧品素材での上市でしたが、現在ではパーソナルケアやアグリ分野まで、国内外で製品展開が広がっています。また、ユーザーニーズの拡大とともに、海外の大手企業も続々と当該分野に参入して競争が激しくなっており、この研究に着手した時に比べると隔世の感があります。

「新しい技術は、導入が早すぎると市場に受け入れらない」とよく言われ、どのタイミングで踏み出すかの判断は容易ではありません。当然、今見えているニーズや市場は、いつまで続くか分かりませんし、始めた研究が必ず成功するか否かも同様です。以前、ある企業の経営層の方から「絶対に失敗しない研究開発とは、絶対にやめないことですよ(要は、失敗という結末が永遠にこない)」と伺ったことがあり、「経営的にはNGでも、他に正解はないか」と妙に納得した記憶があります。今更ではありますが、「未来は予測できないけれど、まずは一歩、そして歩き続けよう」が、成功への入り口でしょうか。

さて、昨年末には第8波が到来しコロナ禍は引き続きの状況ですが、会員の皆様の広範なご理解とご協力のもと、昨年も学会創立70周年記念となる年会を始め、各種の行事を成功裡に開催することができました。関係者の皆様には、改めて感謝申し上げます。今年は、これまでの経験値を生かして、「快適生活を支える」学会の活動の幅をさらに広げていきたいと思います。今年の年会は、高知県内にて対面での開催予定です。皆様との久しぶりの再開や交流を楽しみにしておりますので、是非ともご参加頂ければ幸いです。

昨年、年会の挨拶でも言及しましたが、当学会は生活に密着した科学や技術を扱う人々がオープンな雰囲気で行き交う交差点であり、新しい日常や快適生活に資するサイエンス、製品・サービスの創造の起点になり得るユニークな組織です。このビジョンのもと、「卯のヒト跳ね」のように「まずは、一歩」で、2023年も皆様にとって素晴らしい年となることを、お祈り申し上げます。

2022年新年のご挨拶 北本大 令和3~4年度会長

“コロナ”禍を転じて福となす

新年,明けましておめでとうございます。昨年は,新型コロナウィルスの感染拡大が続く中でのオリンピック・パラリンピック開催でしたが,予想以上の日本選手団の活躍によって暗い空気も一変し,興奮の日々を送られた方も多かったのではないでしょうか。そして,今年は冬季オリンピックの開催です。無事に開催され,再び新たなドラマや感動が届けられることを期待するばかりです。

さて,今更申し上げるまでもなく,全ての方々にとって昨年は最初から最後まで,コロナ禍に翻弄された日々でした。感染拡大の第3 波から始まり,ワクチン接種率の向上による第5 波の減衰まで,出口が見えない状況の中で「新たな日常での経験値」を生かしながら,家庭や職場で様々な問題に対応されてきたことかと思います。

当会においても,一昨年度からの経緯を慎重に踏まえながら,年会を始めとする各種の学会行事を,アクティビティを落とすことなく「これまで以上に」運営することに努めて参りました。結果的には,皆様の多大なるご理解とご協力のお陰を持ちまして,多くの行事においてコロナ禍前と同様の活動を維持することができました。年会については,開催期間が前回から大きく前倒しになったことによる参加者の減はあったものの,全てのシンポジウムや企画において,対面開催と同等以上の充実した発表や討議があったとの認識です。また,前回の反省点であった「学会の臨場感」についても,ライブでの
ショートプレゼンやQ&A を採用したことで,大きく改善されました。社会的に「in person」並みに「on Web」が浸透してきたこともあり,各種の行事にオンライン開催の長所をさらに生かすことができました。

この流れを受けて,学会創立70 周年となる本年の年会も,第2 回オレオサイエンス国際会議(WCOS2022)と併せて8 月末にオンラインで開催予定です。当初,素晴らしい自然と食を誇る北海道釧路市において対面での開催を計画しておりましたが諸般の事情を鑑み,積極的にオンライン開催へと舵を切りました。なお,第3 回オレオサイエンス国際会議(WCOS2027)は,2027 年夏に釧路市にて対面で開催予定ですので,明るい未来を期待して是非とも両方へご参加願います。

一昨年来の「失われた日常」を通して,皆様の生活様式やビジネス習慣も大きく変化したことと思います。今まで,「あって当然」と思っていたことが,「なくて当然」になったことも多いのでは。個人的には,「懇親会」がこの一つになりつつあることに,一抹の寂しさを覚えます。最近のアンケートによれば,仕事において「飲みニケーションは不要」と回答する方が,「必要」と答える方を上回り6 割以上に達しているようです。今後の学会は,「利便性」や「収益性」を考慮してハイブリッド開催が主流になるかと思いますが,「夜に,懇親会で討議する」から,「昼に,アルコールフリーで討議する」に作法が完全に置き換わらないことを祈るばかりです。

一方で,私自身,コロナ禍でポジティブに変わった生活様式があります。コロナ禍前までは,週末はほぼ全て屋内外での運動(スイム・バイク・ラン)に明け暮れておりました。しかし,コロナ禍となって,この行為の成果を発揮する場(各地での大会)が激減し,モティベーションが低下するとともに週末の時間がポッカリと空いてしまいました。同時に,年齢的には「セカンドキャリア」をどうするのか,という問題も顕在化してきました。それならばと,以前から興味があった異分野の学習や資格取得に取り組み始めました。長年の「懇親会」通いによって減退した記憶力での「受験勉強」は予想外に時間を要し,週末はあっと言う間に過ぎていきます。しかし,今や色々な学習がWeb で気軽に効率的にでき,大会に遠征するような感覚で,新しい知識や経験との出会いを楽しんでいます。

昨年の年会シンポジウムでは,「人生100 年時代,快適生活に向けてオレオサインエスができること」について講演させて頂きました。その中で,「生活に密着した科学や技術を扱う人々がオープンな雰囲気で行き交う当会は,新しい日常に資するサイエンス,製品・サービスの創造の起点になり得る」とご紹介しました。このビジョンのもと,2022 年も皆様にとって素晴らしい年となることを,お祈り申し上げます。

北本大 令和3~4年度会長 会長就任のご挨拶 

この度、第67回定時総会ならびに第 447回理事会にて、令和3・4 年度の会長を仰せつかりました。身に余る大役ですが、歴史ある学会の発展に向け可能な限りの努力を進めていきたいと思います。

昨年来、新型コロナウィルスの感染拡大により社会情勢は激動し、日常は大きく変化しています。今や、日々の生活において安全・安心を確保することは容易ではなく、あらゆる場面で制約が発生しています。多くの人にとって、かつてあった「快適生活」は、遠い記憶になりつつあるかもしれません。

一方で、この状況はポジティブな行動変容も起こしてくれました。コロナ禍の影響でオンライン業務が広がり、結果的に「予想外の時間」が生まれ、それが契機となって新しいアイディアやビジネスが創出されつつあります。当会においても、各種行事が中止や開催方式の変更を余儀なくされました。しかし、一昨年度末に年会のオンライン開催を早々に決定し、試行錯誤しながらも準備を進めた結果、従来と遜色ない参加人数や収益を得ることができました。各発表に対して平均で100回以上の聴取があり、また広告形態を多様化できるなど、オンライン開催の効果は予想を大きく上回るものでした。

先に、私が委員長を担いました「将来構想委員会」(2017年)では、学会の持続化の観点から「年会の最大行事化」を柱とし、それに向けた方策案の提言を行いました。これを受け、「年会改革推進委員会」(委員長:慶應義塾大学 朝倉浩一先生)が発足し、その後の年会において改革案が随時実行に移されています。当時課題となっていた実行委員会の負担や、会場の利便性やキャパシティ、セッション毎の発表の偏りなどは、オンライン開催であれば容易に解決可能であり、本年度の年会においては委員会の取り組み成果が大いに期待されます。

将来構想委員会では、各種の方策案に加えて、当会が有する以下の3つの特徴を踏まえて、ビジョンの策定も行いました。

・対象とする科学技術領域の幅が広い

・企業に所属する学会員の比率が高い

・日常生活への密着度が高い科学・技術・製品を目指している

そのビジョンは、『オレオサイエンスを切り拓き、快適生活を支える科学者と技術者の交差点』であり(ホームページのトップにあるのをご存知でしたか?)、「本会は、オープンな雰囲気のもと多様な研究者・技術者が交流し、新しい学術領域や健康で快適な生活を支える技術・製品の創造点となる」ことを意味しています。まさに、「快適生活」にフォーカスしており、コロナ禍の中で失いかけた日常を取り戻す、さらには新しい日常の創生に貢献できうる集団と言えます。

当会では「年会の最大行事化」とともに、「論文誌の高品質化」を進めてきました。諸先輩の英断により、2001 年に「Journal of Oleo Science」が純粋な学術論文誌として創刊され、その後の電子ジャーナル化を経て2010 年にはImpact Factor の対象となりました。そして、本年4月には、オープンアクセスジャーナルとしてDOAJに収録されました。これは、論文誌として国際的な影響力が高いこと、適正・的確な査読機能を備えていることを明示するものです。今後、投稿数の増加や内容の拡充が進むものと期待されます。

当会のビジョンのもと、会員間での柔軟かつ多面的な連携をさらに押し進めることで、現在のコロナ禍を乗り越えて、より魅力的でより持続的な学会へと成長を続けていきましょう。また、本会の特徴を発揮して、学術団体として「快適生活」の創造点となるとともに、公益法人としてSDGsの推進等にも貢献していきましょう。来年には、学会創立70 年記念事業として開催する第2回世界オレオサイエンス会議も予定されております。今後とも、皆様のご理解・ご協力を賜りたく、何卒よろしくお願い申し上げます。