この度、第67回定時総会ならびに第 447回理事会にて、令和3・4 年度の会長を仰せつかりました。身に余る大役ですが、歴史ある学会の発展に向け可能な限りの努力を進めていきたいと思います。
昨年来、新型コロナウィルスの感染拡大により社会情勢は激動し、日常は大きく変化しています。今や、日々の生活において安全・安心を確保することは容易ではなく、あらゆる場面で制約が発生しています。多くの人にとって、かつてあった「快適生活」は、遠い記憶になりつつあるかもしれません。
一方で、この状況はポジティブな行動変容も起こしてくれました。コロナ禍の影響でオンライン業務が広がり、結果的に「予想外の時間」が生まれ、それが契機となって新しいアイディアやビジネスが創出されつつあります。当会においても、各種行事が中止や開催方式の変更を余儀なくされました。しかし、一昨年度末に年会のオンライン開催を早々に決定し、試行錯誤しながらも準備を進めた結果、従来と遜色ない参加人数や収益を得ることができました。各発表に対して平均で100回以上の聴取があり、また広告形態を多様化できるなど、オンライン開催の効果は予想を大きく上回るものでした。
先に、私が委員長を担いました「将来構想委員会」(2017年)では、学会の持続化の観点から「年会の最大行事化」を柱とし、それに向けた方策案の提言を行いました。これを受け、「年会改革推進委員会」(委員長:慶應義塾大学 朝倉浩一先生)が発足し、その後の年会において改革案が随時実行に移されています。当時課題となっていた実行委員会の負担や、会場の利便性やキャパシティ、セッション毎の発表の偏りなどは、オンライン開催であれば容易に解決可能であり、本年度の年会においては委員会の取り組み成果が大いに期待されます。
将来構想委員会では、各種の方策案に加えて、当会が有する以下の3つの特徴を踏まえて、ビジョンの策定も行いました。
・対象とする科学技術領域の幅が広い
・企業に所属する学会員の比率が高い
・日常生活への密着度が高い科学・技術・製品を目指している
そのビジョンは、『オレオサイエンスを切り拓き、快適生活を支える科学者と技術者の交差点』であり(ホームページのトップにあるのをご存知でしたか?)、「本会は、オープンな雰囲気のもと多様な研究者・技術者が交流し、新しい学術領域や健康で快適な生活を支える技術・製品の創造点となる」ことを意味しています。まさに、「快適生活」にフォーカスしており、コロナ禍の中で失いかけた日常を取り戻す、さらには新しい日常の創生に貢献できうる集団と言えます。
当会では「年会の最大行事化」とともに、「論文誌の高品質化」を進めてきました。諸先輩の英断により、2001 年に「Journal of Oleo Science」が純粋な学術論文誌として創刊され、その後の電子ジャーナル化を経て2010 年にはImpact Factor の対象となりました。そして、本年4月には、オープンアクセスジャーナルとしてDOAJに収録されました。これは、論文誌として国際的な影響力が高いこと、適正・的確な査読機能を備えていることを明示するものです。今後、投稿数の増加や内容の拡充が進むものと期待されます。
当会のビジョンのもと、会員間での柔軟かつ多面的な連携をさらに押し進めることで、現在のコロナ禍を乗り越えて、より魅力的でより持続的な学会へと成長を続けていきましょう。また、本会の特徴を発揮して、学術団体として「快適生活」の創造点となるとともに、公益法人としてSDGsの推進等にも貢献していきましょう。来年には、学会創立70 年記念事業として開催する第2回世界オレオサイエンス会議も予定されております。今後とも、皆様のご理解・ご協力を賜りたく、何卒よろしくお願い申し上げます。