この度,第71 回定時総会の理事会におきまして,令和7 年度および8 年度の日本油化学会会長を仰せつかりました後藤直宏でございます。歴史と伝統ある本会の会長という大役を岡野会長から引き継いで務めることとなり,その責任の重さに身の引き締まる思いでございます。同時に,これまで本会を支えてこられた諸先輩方のご尽力に改めて深く感謝申し上げます。
本会は,油脂・脂質,界面活性剤,および関連分野における多様な研究者や技術者が交流し,新たな知見や価値を創造する場として,学術界・産業界の発展に寄与してきました。このような伝統と基盤を受け継ぎながら,私の任期中には岡野前会長と一緒に活動したときに炙り出されてきた問題点の解決を第一の目標として掲げ,活動を推進する所存です。
第一に,2000 年以降の油化学に関するデータの再整理と,それらの成果を日本油化学会のホームページ,もしくは冊子体などを通じて広く公開することを目指します。これにより,会員の皆様や社会全体に対して近年の油化学研究の進展を可視化し,さらに多くの方々に油化学の魅力を知っていただくことが期待されます。
第二に,基準油脂分析試験法のさらなる充実に取り組みます。また,国際的な価値を高めるためにISO への登録を目指します。油脂分析は産業界および学術研究において欠かせない基盤技術であり,その精度と実用性を向上させること,さらには基準油脂分析試験法が世界的に認められることは,本会の世界的信頼性向上にも直結すると考えています。
第三に,次世代を担う研究者や技術者の育成に力を注ぎます。フレッシュマンセミナーの内容をさらに充実させるため,専用の教科書の改訂を実施し,初学者がより効果的に知識を習得できるよう努めます。また,若手の油化学研究者へ単年でなく複数年にわたる研究費で支援し,ユニークな研究シーズを創出する仕組みを構築できればと思っています。意欲ある若手の研究活動を支援する環境を整えることで,持続可能な油化学分野の発展を図りたいと考えています。
最後に,学術誌Journal of Oleo Science(JOS)のインパクトファクター(IF)を2.0 以上に引き上げることを目指します。ここ数年,JOS のIF が1.5 を超えた辺りで停滞しています。やはり,世界的に油化学の顔となる学術誌になるためには,IF が2.0,可能ならば3.0 は必要だと考えます。多くの研究者や委員会メンバーの知恵をお借りして是非とも高みを目指したいと考えています。
これらの取り組みを実現するためには,会員の皆様をはじめ,産業界や学術界の多くの関係者のご理解とご協力が不可欠です。日本油化学会の掲げる「オレオサイエンスを切り拓き,快適生活を支える科学者と技術者の交差点」というビジョンのもと,柔軟かつ有機的な連携を進めながら,本会のさらなる発展に貢献してまいります。
皆様には,引き続き本会活動へのご支援を賜りますようお願い申し上げます。ともに日本油化学会の未来を築き上げていけることを心から楽しみにしております。