日本油化学会

部会活動

日本油化学会第52回年会 界面科学部会ランチョンシンポジウム

日時 2013年9月4日(水)12:00-13:30
場所 東北大学川内キャンパス(第52回油化学会年会会場内)
     
講師 井村知弘 先生(産業技術総合研究所)
演題 ペプチド型界面活性剤の新展開
講演概要 化粧品や食品における機能性素材として注目されているアミノ酸が複数個つながったペプチドについてお話しいただきました。3つの研究成果から構成されており、最初は枯草菌によって量産される冠状ペプチドであるサーファクチンに関する研究成果でした。CMC以上で巨大ミセルを形成することや、濃厚領域で特異なラメラ液晶を形成することなどの界面科学的見地からすすめられた研究についてご紹介いただき、その応用展開についてお話しいただきました。2つ目はタンパク質を加水分解したアミノ酸オリゴマーである大豆ペプチドについてでした。加水分解度の異なる各種の大豆ペプチドについて、その界面物性・乳化特性について研究され、 加水分解度の低いペプチドは、通常の界面活性剤と同様に、界面に配向して表面張力を低下させるため、優れた乳化特性を示すことを紹介いただきました。3つ目は生体内でコレステロール逆輸送を担うHDL(High Density Lipoprotein)粒子に類似したバイセル状のナノ粒子(ナノディスク)をペプチドにより合成する最新の研究についてお話しいただき、その製造法、キャラクタリゼーション、応用展開について紹介していただきました。
     
講師 酒井健一 先生(東京理科大学)
演題 ペプチド系ジェミニ型両親媒性物質の開発およびその応用
講演概要 優れた界面科学的物性を発揮するジェミニ界面活性剤は様々な構造が報告されていますが、酒井先生の研究グループでは二つのアシルアミノ酸エステルの親水部(アミノ酸部)を別のアミノ酸で結合させたジアシルグルタミン酸リシンNa塩について研究されています。講演は2つのテーマから構成されていました。最初のテーマはカチオン性界面活性剤との組み合わせで形成される、ひも状ミセルに関する研究成果でした。鎖長、スペーサー長を変えて増粘挙動について検討されたほか、一鎖一親水基型であるアシルグルタミン酸に三級ないし二級のアルキルアミンを複合化させた擬似ジェミニ型両親媒性物質を調製し、その増粘挙動についても検討された結果を解説いただきました。2つめのテーマはジアシルグルタミン酸リシンNa塩と高級アルコール・水との三成分混合系におけるα-ゲル形成についてでした。対応する一鎖一親水基型の両親媒性物質でα-ゲルを調製した場合に比べて、低粘度なα-ゲルとなり、さらに油を添加したところ分散安定性が良好な乳化物が得られたことについて紹介していただきました。