地区別活動状況
- 関 東
- 日本油化学会界面科学部会 関東地区行事
平成24年度 第59回界面科学部会秋季セミナー報告
第59回界面科学部会秋季セミナーを開催しました
界面科学部会副部会長 荒牧賢治(横浜国立大学大学院環境情報研究院)
界面科学部会が主催する秋季セミナーを2012年11月1日(木)~2日(金)にホテル箱根アカデミーにおいて開催しました。会場は神奈川県箱根町の芦ノ湖の湖畔にあり、非常に景色の良いところです。おおよそ例年そうですが、2日間とも秋晴れに恵まれ、非常に気持ちよい環境で行いました。参加者は企業の若手研究員を中心に56名となり、懇親会での交流も盛んに行いました。以下に紹介したように食品、医薬品、化粧品に関する講演を初日に4題、2日目に5題行い、参加者においては密度の高い情報のインプットと交流ができたと思います。以下にセミナーの概要を書きます。
初日は初日は13時から17時すぎまで以下の講演とディスカッションを行いました。川上亘作先生(物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点)には「難水溶性薬物の製剤化技術の最前線」の演題で、医薬品開発において不可欠な、難水溶性薬物の溶解を助ける製剤として、腸管内で自発的に乳化する製剤や、ナノ結晶を利用した製剤、非晶質状態を利用した製剤などについてその特徴や最近の進歩、さらには製剤選択の戦略について解説していただきました。中沢寛光先生(関西学院大学 理工学部)には「電子線及びX線回折法を用いた皮膚角層の構造解析」の演題で、電子線及びX線(放射光)回折を利用した構造解析法の原理や得られたデータの解析手法と角層構造の解析の最新の研究成果についてお話しいただきました。松永由紀子先生(資生堂)には「自己溶解型マイクロニードルの化粧品領域への応用」の演題で、経皮での薬物送達技術として医薬品分野で注目を集めている自己溶解型マイクロニードルの化粧品への応用として、ヒアルロン酸を角層内で溶解させて効果を発揮する目元用マスクのしわに対する有効性と細胞への作用メカニズムについて紹介していただきました。小野知二先生(ライオン)には「腸溶性ラクトフェリンの内臓脂肪低減効果」の演題で乳中に含まれる多機能性タンパク質で、抗菌、免疫賦活、がん予防作用など様々な機能が知られているラクトフェリンの内臓脂肪低減効果について脂肪を減少させていることを示すデータとその作用メカニズムについて解説していただきました。このあと18時から懇親会を行い、続けて23時くらいまで二次会で交流を深め、さらには露天風呂温泉でリラックスして、一日のスケジュールを終えました。
2日目は朝食後、8時50分から昼食を挟み、15時過ぎまで以下の講演とディスカッションを行いました。中村卓先生(明治大学 農学部)には「食感(テクスチャー)デザインへのアプローチ~タンパク質・多糖類ゲル食品の構造形成と破壊~」の演題で、多成分ゲル食品の相分離構造の形成と破壊の過程についての基本的概念について解説し、電子顕微鏡観察とレオロジー測定を中心に食感がどのように発現するかについて実例を交えて解説していただきました。大島宏先生(ポーラ化成工業)には「皮膚色の測定 ~色素沈着・紅斑の計測法~」という演題で、皮膚色を客観的に計測する新しい技術として、デジタル写真とフリーウェア(ImageJ)を使い、非接触で色素沈着・紅斑を測定する方法とその応用について実例を交えてお話しいただきました。山下美年雄先生(コーセー)には「ヘアケア向けカチオンベシクルの開発とその応用に関する研究」の演題で、2鎖型のカチオン界面活性剤が形成するベシクルの形成およびその物性に関する研究成果と、そのヘアケア効果について紹介して頂きました。小田島秀樹先生(カネボウ化粧品)には「高い紫外線防御効果と好感触を両立させたサンスクリーンの開発」の演題で、デイリー使用のサンスクリーン剤の開発において高い紫外線防御効果と好感触を両立させた水中油型製剤についてお話しいただきました。宮木正廣先生(花王)には「「肌へのやさしさ」と「洗浄力」を両立した新しい皮膚洗浄技術の開発」の演題で、皮膚洗浄剤の歴史と市場動向の概説のあと、基本的な界面活性剤溶液物性であるcmcが皮膚刺激に大きく影響していることと、それをふまえた製品開発についてお話しいただきました。
講義の様子
懇談会の様子