去る平成28年11月26、27日の両日、物理化学インターカレッジセミナー兼日本油化学会界面科学部会九州地区講演会が福岡大学セミナーハウスで56 名[講師3 名; 一般(教員を含む)15 名; 学生32 名]の参加により開催されました。参加校は福岡大学、福岡工業大学、長崎国際大学、佐賀大学など九州各地からの参集がありました。発表は、特別講演3 件、大学院生および学部生による口頭発表7件、ポスター発表20 件が行われました。今回は特に日本油化学会の科研費【研究種目:国際情報発信強化】の援助により、2名の外国人講 師:Kwanwoo Shin教授(Sogang University, Korea), Chien-Hsiang Chang教授(National Cheng Kung University, Taiwan)を招聘し活発な議論が繰り広げられました。
第1日目はKwanwoo Shin先生と佐賀大の坂口幸一先生の特別講演がありました。Shin先生 には「How Chemistry and Physics Meet in the Biological Arena : Molecular Structures and Reactions at Biological Membranes」という題目で、特に細胞に見られる生命現象を界面化学から説明する為に、生物模倣的アプローチを持って進められている研究成果について講義を頂きました。膜構成要素(リン脂質、膜タンパク質)を有する脂質ベシクルが持つ人工細胞が有する複雑で興味深い特性と機能について、X線や中性子反射測定を用いた2分子膜物性の新しい評価方法、細胞外マトリックスタンパクを用いた高秩序なネットワークの形成と機能性など多岐にわたる先進的な研究活動についてご説明頂きました。坂口先生には「溶媒親和性炭素材料の合成と評価」というタイトルで講演して頂きました。講演ではグラフェン電気的・機械的・熱的に優れた特性が生まれる理由、グラフェンを調製する方法、酸化グラフェンを用いた機能性官能基を導入手段、最近のこの分野における研究動向等について入門者にも分かりやすく説明して頂きました。
特別講演 Kwanwoo Shin先生???????????????? 特別講演 坂口幸一先生
特別講演 Chien-Hsiang Chang先生
写真左から受賞者:呉さん(福岡工業大),塚本さん(福岡大),中島さん(長崎国際大),
大竹さん(佐賀大)
優秀口頭 発表賞 |
活性型グレリン産生抑制作用を有する天然化合物の探索 | 長崎国際大院薬 | 中島 健輔 | D3 |
アルキル付加グラフェン誘導体の合成と機能性の評価 | 佐賀大院工 | 大竹 亜紗美 | D2 | |
優秀ポス ター賞 |
Synthesis of fluorohectorite/polyacrylic rubber composite | 福工大院工 | 呉 玉嬌 | M2 |
大食細胞への微粒子の付着・取込に対する 単一細胞・単一粒子レベルでの観測 | 福岡大工 | 塚本 七海 | M1 |
2日目の特別講演はProf. Chien-Hsiang Chang先生に「Fabrication of vesicles from mixed cationic/anionic surfactants with additives」というタイトルの講演をしていただきまし た。アニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤の混合により形成されるカチオン性のベシクルについて紹介して頂き、このベシクルにコレステロールを加えた際の物理的強度への影響について実験結果を踏まえて詳しく解説して頂きました。
一般参加者及び学生による口頭・ポスター発表では、界面科学及び物理化学を基盤とした多種多様な分野で研究を行う学生と研究者(名誉教授等を含む老若男女)が互いに議論を交わし、互いの成長の為の有意義な時間を過ごすことができたと思います。今年度は2名の外国人による講演者を招き、英語のディスカッションが行われ、学生も大変刺激を受けることになりました。界面科学部会九州地区の更なる活性化を目指して、研究成果の発表を通して研究者間及び学生交流及び研鑽する場として今後も本セミナーを活用していきたいと考えております。
平成28年度 集合写真
なお、今年度のセミナーは佐賀大学大学院工学系研究科・成田貴行の担当で開催致しました。平成29年度は福岡工業大学・宮元展義先生のお世話で開催される予定になっております。(報告:佐賀大学大学院工学系研究科 成田貴行)
写真:特別講演の演者2名:講演後会場にて:
K. Shin教授(左)、C.-H. Chang教授