令和5年12月2日、物理化学インターカレッジセミナー兼日本油化学会界面科学部会九州地区講演会を、福岡大学にて実施いたしました。今年度のセミナー世話人は福岡大学・勝本之晶、真田雄介、渡辺啓介が担当いたしました。
今年度は3名の講師をお招きして、招待講演を行っていただきました。九州大学の秋山良先生には、「電解質溶液中の同符号電荷間の実効引力」についてお話いただき、タンパク質の電解質水溶液におけるリエントラント現象について、理論と実験の両面から溶液化学の新展開を紹介いただきました。佐賀大学の梅木辰也先生には、「分子置換を利用した深共晶溶媒の機能調整」についてご教授いただき、イオン液体の研究から深共晶溶媒への展開に至る経緯から、合成における苦労の話も交えながら、炭素吸着能に関するメカニズムまで詳しく教えていただきした。最後に、九州工業大学の梅野錬先生には、「自立マイクロチャネル型バイオカロリメータを用いた単一細胞の微小熱計測」についてお話いただき、従来のバイオカロリメトリーにおける105問題を皮切りに、それを解決するための、実際的なアプローチと、装置開発における必要要毛を、学生にもわかるように噛み砕いた内容で講演していただきました。梅野先生には、未だ博士課程の学生ながら、非常に広い視野と、深い洞察を備えた講演をしていただき、大学院生をはじめ多くの学生の刺激になったのではないかと思います。
参加者は、45名[招待3名; 一般13名; 学生27名]であり、学生は佐賀大学、福岡工業大学、福岡大学、九州工業大学、第一薬科大学、熊本大学、九州大学からの参加でした。各大学の学生から20分~10分の枠で9件の口頭発表と10件のポスター発表が行われました。学生による発表は、膜タンパク質、生体材料、ハイドロゲル、イオン液体や高分子、無機ナノシートから桑の実にいたる非常に幅広い物質を対象に、生物物理学、材料科学、高分子化学、物性物理、分子動力学、電気化学などにおける、結晶化、ゲル化に関わる構造解析や機能化について研究報告がなされました。教員のみならず学生からも質問が発せられ、熱心に質疑および議論が交わされました。今後もこの傾向が続き議論が活性化することを期待しています。発表した学生にとっては、今後の研究の進展や発表の向上に向けて良い経験となり、今後の卒業研究や修士論文発表会の良い発表練習の機会になったと思います。
今回は、聴講した教員および学生全員による投票審査によって、優秀口頭発表賞2件とポスター発表3件の受賞者を選定しました。令和5年度の受賞者は以下のとおりです。
優秀口頭
発表賞 |
コラーゲン溶液へのUV処理がゲル化と
その形態に与える影響 |
佐賀大院理工 | 石橋 優 | M2 |
様々な光源による定量的酸化グラフェン
分散安定性評価 |
佐賀大院理工 | 神代 健人 | M1 | |
優秀ポスター賞 | 桑の実成分のメラニン色素産生への影響 | 福岡工大院工 | 鶴嶋 真紅 | M1 |
分解性ゲルを利用したナノシートへの
生体分子修飾 |
福岡工大院工 | 安富 大祐 | M1 | |
炭素電極の耐水性向上と電気化学への応用 | 佐賀大院理工 | 伊福 寧々 | MB4 |
界面科学部会九州地区の更なる活性化を目指して、研究成果の発表を通して研究者間及び学生交流及び研鑽の場として更なる発展を期待しております。
(報告:福岡大学 渡辺啓介 2023年12月8日)