油化学界面科学部会九州地区では,例年,地区行事として標記セミナーとジョイントして講演会を開催しています。『物理化学インターカレッジセミナー』は,もともとは福岡近郊の大学でコロイド・界面化学を専門とする物理化学研究室の間の研究交流会でした。最近では遠く大分大学や鹿児島大学からの参加も得て,インター九州的なセミナーに発展してきています。このセミナーは大学院生の研究発表(口頭およびポスター)を主体とするものですが,油化学やコロイド・界面科学関係の研究者を招待して講演会を開いています。
本年度は,佐賀大学理工学部の中島謙一先生のお世話により2003年12月13日,14日の両日,福岡大学セミナーハウスで61名の参加により開かれました。(詳しい実施内容はこちら)大学院生による研究発表は11件の口頭発表と7件のポスター発表が行われました。
それに加えて,大阪大学分子熱力学研究センター長を勤められて平成15年3月に定年退官された徂徠道夫先生,九州大学の師井義清先生,福岡大学の杉原剛介先生による3件の招待講演がありました。徂徠先生はセミナー直前に集中講義のために福岡大学に来学されましたが,この機会に先生に講演をお願いしました。演題は『電子が関与した珍しい相転移現象』というものでしたが,物質の熱容量を広い温度範囲にわたって精密に測定することによって見出された相転移についてのお話で,物質科学の基本を教えられるものでした。また,『物質は相転移においてその本性を現わす』という先生の言葉は印象的でした。師井先生と杉原先生は長年にわたって油化学会ならびに界面科学部会九州地区の活動に中心的な役割を果たされてきましたが,お二人とも平成16年3月で定年退官・退職されます。師井先生は『ミセルへの可溶化とその速度論,そして最近思うこと』という演題で,また,杉原先生は『界面活性物質二成分混合系の熱力学的取扱い』という演題で,それぞれ長年にわたる研究成果の一端をお話しされました。大学院生の研究発表についてはプログラムを参照ください。また,招待講演,ポスター発表風景,参加者の集合写真を載せていますが,セミナーの雰囲気の一端が窺えると思います。なお,来年度のこのインターカレッジセミナー兼油化学界面科学部会九州地区講演会は鹿児島大学の早川先生のお世話で開催されることになりました。 (福岡大学理学部・井上 亨)