平成29年度 界面科学実践講座2017報告

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界面科学実践講座2017 -基礎と応用-(東海)

例年通り、12月の第一金曜日(1日)に東海地区の界面科学実践講座を開催しました。この講座は、先輩諸先生方の努力により界面科学に関する講座として東海地区で歴史のあるもので、本年度も総勢 78名(幹事等を含む)の方々に参加いただきました。

本年度は、まず界面科学部会(東海)部会長の松崎(東亞合成)より、「主に新人の方々を対象に、わかりやすいをモットーとし」、「5名の講師により基礎から応用までを網羅した」講座であることをご案内。さらに日本油化学会東海支部、及び界面科学部会での活動や行事予定を紹介しました。その後、下記5名の講師による、いずれもたいへん興味深く充実した内容の講義が行われました。また、講義後の懇談会には約30名が参加され、分野や会社などの垣根を越えて活発な意見交換がなされました。このように、本年も多数の参加者のもとで有意義な実践講座となり、このような講座が広く必要とされていると実感しました。今後も「わかりやすく」と「交流できる場」を主眼に置いて継続していきたいと考えております。

 

1.「界面活性剤概論?界面科学の物理化学と分子構造学?」

名古屋市立大学大学院 システム自然科学研究科 片山詔久 氏

 界面活性剤の分子構造と物性との相関や、分子集合体としての物理化学の基礎など、界面活性剤の基礎を分かり易く講義していただきました。界面活性剤の分類、選択に必要な基礎知識の習得を行うことができました。界面活性剤の性質や機能を物理化学や分子物性の観点から説明頂き、理解を深めることができました。

2.「乳化物の作り方と使い方」

中京油脂株式会社 開発センター 加藤 丈明 氏

 乳化に関する基礎的な講義を丁寧に講義いただきました。機械的乳化・化学的乳化による乳化の製法・乳化物の評価方法等を機器の仕組みから学ぶことができました。安定な乳化系を得るためのポイント解説頂き、さらに実際に乳化剤を用いた乳化について実演して頂き、乳化系の違いによる乳化状態の違いを体感することができました。

3.「界面活性剤のコンクリートへの応用」

竹本油脂株式会社 第三事業部 研究開発部 古田 章宏 氏

 界面活性剤のコンクリート分野での応用例について、動画を交えて具体的な効果を講義いただきました。コンクリートの混和剤としての界面活性剤について紹介いただき、使用量は極少量であるが、流動性の向上やセメント分散力向上、CO2排出削減にも影響を及ぼし重要な役割を果たしていることが分かり、生活の中での界面活性剤の使用と効果を学ぶことができました。

4.「皮膚洗浄剤~洗浄効果へのマイルドさの両立~」

クラシエホームプロダクツ株式会社 ビューティーケア研究所 岩永 哲朗 氏

 界面活性剤の洗浄効果について、界面活性剤の種類と機能から、皮膚組成への影響や評価手法など、最近のメイク落としに必要な界面活性剤の機能なども含めて講義いただきました。低刺激性を達成するための界面活性剤の選択、また併用効果など開発手法を紹介いただき、市場の要望からの製品開発についても学べる有意義な講義でした。

5.「ひも状ミセルと逆ミセル~臨界充填パラメーターからの考察」

名古屋工業大学 大学院工学研究科 生命・応用化学専攻 多賀 圭次郎 氏

 界面活性剤分子集合体の構造と臨界充填パラメータ(CPP)の関係を解説頂き、ひも状ミセルが形成される条件は順相、逆相系を問わずCPPに基づいて整理できることを解説頂きました。ひも状ミセル水溶液が粘弾性を有し流動抵抗低減効果を発現すること、その効果がポンプ送液時の省エネに役立つことをわかりやすく説明頂きました。ひも状ミセルの形成による渦抑制現象とはね戻り現象の発現を説明頂く際、動画が動かないトラブルが発生し残念でしたが、一部の方には懇談会で改めてご紹介頂きました。

講座の様子
演示実験の様子