去る平成30 年1月27、28 日の両日、物理化学インターカレッジセミナー兼⽇本油化学会界⾯科学 部会九州地区講演会が⼤分県の湯布院 FIT セミナーハウス(福岡⼯業⼤学の合宿施設)にて、44 名[講 師5 名; ⼀般(教員を含む)14 名; 学⽣24 名]の参加により開催されました。福岡⼤学、福岡⼯業⼤学、 佐賀⼤学など九州各地からの参集がありました。発表は、特別講演3 件、招待講演2 件、⼀般講演(⼤学院⽣および学部⽣による⼝頭発表を含む)9 件、ポスター発表16 件が⾏われました。今回は、福岡⼯業⼤学 物質・エネルギーデバイスセンター(⽂部科学省私⽴⼤学戦略的研究基盤形成⽀援事業)との共催 とさせて頂きました。
平成29年度 集合写真
第1⽇⽬は寺島 崇⽮ 先⽣(京都⼤学)と、柴⽥攻 先⽣(⻑崎国際⼤学)の特別講演がありました。 寺島先⽣には「両親媒性ランダム共重合体の精密⾃⼰組織化とナノ構造体の構築」という題⽬でご講演頂きました。ブロック共重合体のミセル形成はよく知られていますが、疎⽔性と親⽔性の側鎖を持つランダム共重合体がミセルを形成するという話は珍しく、しかもミセルサイズが分⼦量に依存しないなど、⾮常に興味深いお話でした。このような系を、徹底的に追求して新たなサイエンスを開拓していく姿勢には、学⽣達も学ぶところが多かったのではと思います。
特別講演1 寺島 崇⽮ 先⽣(京都⼤学) 特別講演2 柴田攻 先生(長崎国際学)
2つめの特別講演では柴⽥先⽣に「創薬 から⽣体材料への試み Langmuir 単分⼦膜を中⼼として」という題⽬でご講演を頂きました。講演では、まずLangmuir 単分⼦膜について、その歴史を含めて基礎的な内容を丁寧にご教授頂き、⼤変勉強になりました。さらに、柴⽥先⽣が⻑年研究してこられた肺サーファクタント⽋乏による病気の治療に貢献するモデルペプチドや、部分フッ素アルカン化合物のミセル形成などについて、興味深いお話を伺うことができました。今年度で退官される柴⽥先⽣の⻑年の研究の総括として、まとまったお話を聞けたことは⼤変貴重な機会でした。
2⽇⽬の特別講演は⻑⽥義仁 先⽣(理化学研究所)には「「物質の普遍的存在―⾼分⼦ゲル」―⼈⼯軟組織の創製をめざして―」というタイトルでお話し頂きました。⾼分⼦ゲルの研究を⻑年にわたって牽引されてきた、⻑⽥先⽣ならではのご講演でした。まず、時間スケールや空間スケールによって、固体としても液体としても振る舞うという、ゲル物質の重要な側⾯を分かりやすく説明して頂きました。そして、分⼦が持つ機能・特性を増幅して、⾼強度、低摩擦、⾃⼰修復性などの特性を引き出し、眼球や軟⾻などの⽣体の組織を代替する材料を創製していくという、壮⼤な試みをお話し頂きました。これらのほか、2 件の招待講演として、敷中⼀洋 先⽣(産総研 主任研究員) に「未変性植物バイオマスを⽤いた⾼機能素材開発」、⼭本伸也 先⽣(福岡⼯⼤ 研究員)には「構造⾊をもつナノシート液晶」の題⽬で講演をして頂きました。
⼀般参加者及び学⽣による⼝頭・ポスター発表で は、界⾯科学及び物理化学を基盤とした多種多様な分 野で研究を⾏う学⽣と先⽣⽅が熱⼼に議論を交わしま した。また懇親会では、普段なかなか話す機会のない 他⼤学の学⽣や先⽣⽅との交流を深め、様々な意味で の刺激を受けて、有意義な時間を過ごすことができた ことと思います。また、ご参加頂いた先⽣⽅による厳 正な審査により、優秀講演賞2 件と優秀ポスター賞3 件の受賞者を選定しました。平成29 年度の受賞者は 以下の表のとおりです。
表:平成29 年度 学?表彰者?覧
優秀講演賞 | Langmuir 法を利用した非対称性リポ ソームの新規調製法の確立 | 佐賀大院工 | 光武 祐希 | M1 |
ナノシート液晶を含有したダブルネット ワーク高分子の合成 | 福岡工大工 | 古川 聡起 | B4 | |
優秀ポスター賞 | DNA修飾ナノシートの合成 | 福岡工大院工 | 安樂 信哉 | M2 |
キトサンを内包した温度感受性自 律拍動カプセルの調製 | 佐賀大院工 | 高﨑 夕希 | M1 | |
構造色をもつナノシート/高分子ゲ ル複合体 | 福岡工大院工 | 末吉 恵一朗 | M2 |
界⾯科学部会副部会⻑柴⽥先⽣(⻑崎国際⼤)と受賞者の記念撮影。左から順に、成⽥先⽣(佐賀⼤ 院)(授賞式に出席できなかった光武さんの代理で)、古川さん(福岡⼯⼤),安楽さん(福岡⼯⼤ 院)、⾼崎さん(佐賀⼤院),末吉さん(福岡⼯⼤院)。
界⾯科学部会九州地区の更なる活性化を⽬指して、研究成果の発表を通して研究者間及び学⽣交流及び研鑽する場と して今後も本セミナーを活⽤していきたいと考えております。なお、今年度のセミナーは福岡⼯業⼤学⼯学部⽣命環境 科学科・宮元展義の担当で開催致しました。平成30年度は福岡⼤学・勝本之晶先⽣のお世話で開催される予定になって おります。
(報告:福岡⼯業⼤学⼯学部⽣命環境科学科宮元展義)