平成27年度 第62回界面科学部会秋季セミナー報告

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第62回界面科学部会秋季セミナーを開催しました

界面科学部会部会長 荒牧賢治(横浜国立大学大学院環境情報研究院)

 界面科学部会が主催する秋季セミナーを2015年11月5日(木)?11月6日(金)にIPC生産性国際交流センター(神奈川県葉山町湘南国際村)において開催しました。歴史ある本セミナーも今回で62回目となりました。高台から相模湾と富士山を望める非常に景色の良い場所にあり、2日間とも秋晴れに恵まれ、気持ちの良い環境で行うことができました。参加者は企業の若手研究員、学生を中心に51名となり、懇親会での交流も盛んに行いました。以下に紹介したように講演を初日に4題、2日目に3題行い、参加者においては密度の高い情報のインプットと交流ができたと思います。以下にセミナーの概要を書きます.
初日は13時から17時過ぎまで以下の講演とディスカッションを行いました。 江川麻里子先生(株式会社資生堂)には「分光技術を活用した皮膚成分計測」の演題で、ラマン分光法および近赤外分光法を用いた皮膚の成分イメージングを中心に、皮膚の状態評価を非侵襲で行った研究成果について解説していただきました。西直哉先生(京都大学大学院工学研究科)には「イオン液体のソフト界面:分子レベル構造の研究とその機能応用」の演題で、イオン液体の特性、研究の歴史を概説いただき、X線反射法を中心にして行ったイオン液体ー水界面近傍での構造形成、金ナノロッド合成への利用についての最新の研究成果についてお話しいただきました。上野聡先生(広島大学大学院生物圏科学研究科)には「O/Wエマルション中の油脂結晶化と安定性の関係 -食品への応用を目指して-」の演題で、油脂のエマルションについて食品科学での重要性と油脂粒子の結晶化による構造変化が引き起こすエマルションの不安定化について、マイクロビームX線回折による解析などを通じて行ったご自身の研究成果について紹介していただきました。皆瀬慎先生(株式会社ホージュン)には「モンモリロナイトおよびその有機変性粘土の特徴と工業的利用について」の演題でモンモリロナイトの定義、特性、構造、利用法について概説いただき、油中での構造とゲル形成について解説していただきました。このあと参加者自己紹介を行い、18時半から懇親会で交流を深め、一日のスケジュールを終えました。
2日目は朝食後、9時から以下の講演とディスカッションを行いました。高橋勉先生(長岡科学技術大学技学研究院)には「ソフトマターのハンドリングと降伏挙動」の演題で、基盤上に置くと移動や拭き取りなどのハンドリングが困難であるソフトマターについて、弾性体として扱える条件を利用することにより基盤からそのまま剥がして別の場所に移動する装置「スイットル」の実演と原理を解説していただいた。小山匡子先生(太陽化学株式会社)には「身体洗浄剤の泡評価:泡レオロジーの時間依存測定からの考察」の演題で、ボディーソープ泡沫のレオメータによる測定、データ解析について現在行っている研究成果を紹介いただき、官能試験の結果とフィットするレオロジーパラメータの抽出を試みた研究成果について紹介して頂きました。森川利哉先生(花王株式会社)には「固形石けん製剤技術と脂肪酸カルシウム塩の応用に関する研究」の演題で、石けん製造の歴史を概説いただいた後、セッケンに非イオン界面活性剤を混合させ、気泡を含んだ固形石けんの開発と金属石けんの殺菌性に関するデータについてお話しいただきました。
今回の会場は初めて使用するところであり、勝手が分からない部分もありましたが、無事に終了することができました。ご講演・ご参加頂いた方々、セミナーの準備と進行を行っていた界面科学部会の幹事の方々にお礼申し上げます。

講義の様子