界面科学実践講座2014-基礎と応用-(東海)
例年、12月の第一金曜日に開催されています東海地区の界面科学実践講座が、12月5日(金)に開催されました。この講座は、先輩諸先生方の努力により界面科学に関する講座として東海地区で歴史のあるものですが、今年は、講座名を「界面科学実践講座」としてから20回目の開催となったと副部会長の村田先生が報告されました。「とにかく式を使わずわかりやすく」、「懇談会は互いの交流のため必ず行う」をモットーに今後も委員の先生方と共に講座を継続したいと思います。
さて、今年は協賛をお願いする団体も増やして油化学関係以外の学会にも開催をアピールしました。その結果、企業関係者の方の参加が昨年よりさらに多くなり、全体の参加者数として、講師及び関係者を含め85名の盛況な会となりました。この分野のこのような講座が広く必要とされていることの表れと思われます。以下に、それぞれの講義の内容と所感をまとめます。
1.界面活性剤概論-両親媒性分子の構造と性質-
鈴鹿工業高等専門学校生物応用化学科 准教授 高倉 克人 氏
昨年に引き続き、高倉先生に概論を担当して頂きました。講義は、主に界面活性剤の構造と一般的な性質について説明を頂きました。先生は、昨年もそうであったのですが、1つ1つの内容を丁寧に説明して下さいます。入社間もない若手研究者や専門外の皆さんには解かり易い講義であったと思います。
2.ポリグリセリン脂肪酸エステルの特性とその乳化、可溶化特性
太陽化学株式会社 インターフェイスソリューション事業部 高橋 宏輝 氏
日頃は、この東海の界面科学部会の庶務幹事として活躍頂いている高橋先生に、ポリグリセリン脂肪酸エステルについてのお話を頂きました。食品をはじめ、化粧品や化成品等、安全性志向の高まりから広く使用されるようになってきたポリグリセリン脂肪酸エステルの応用事例を中心に紹介して頂きました。
3.洗浄における乳化・可溶化の基礎と実際
花王株式会社 エコイノベーション研究所 坂井 隆也 氏
洗浄という観点から、乳化と可溶化の基本事項を説明して頂きました。特に、講義の最後の方では、洗浄系での新しい乳化として、泡の形状をコントロールすることにより泡が自発的に液体油を吸い込み、泡が油を捕獲するような現象を紹介して頂きました。マイルドな洗浄技術の進歩を感じることができました。
4.濡れの原理と超撥水/撥油表面
元・北海道大学電子科学研究所教授 辻井 薫 氏
辻井先生には昨年の講座で予期しないご事情でお越し頂けなかったことから、再登板を主催者からお願して今回の講義が実現しました。表面張力の基本的な考え方を表面エネルギーの観点から解かり易く、すっきり説明して頂きました。また超撥水/撥油表面を作る原理と実例を示されました。先生の講義では、若手の研究者に対する期待が話の節々に感じられ、聴講した皆さんには界面科学の面白さを判って頂けたのではと思います。
5.洗浄の基礎と応用 -界面科学から見た洗浄の世界-
ライオン株式会社 オーラルケア研究所 竹内 祥訓 氏
竹内先生には、先生の三年前の講義が好評であったことを受け、再度お願いしました。先生の講義は、ローリングアップ等の興味ある現象をつぎつぎに演示しながら、しかも、席の後ろの方にも見易いようにPCのカメラで捉えた画像をスクリーンに映し出して説明されるところが特徴です。聴講の皆さんに界面科学の現象を実感して頂ける講義であったと思います。
講座の様子
演示実験の様子