界面科学実践講座2009報告

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界面科学実践講座2009-基礎と応用-(東海)

界面科学部会部会長 浅野 浩志(日本メナード化粧品㈱)

平成21年12月4日(金)に、参加者数60名で表題のセミナーを名古屋市工業研究所で開催しました。この会は、日本油化学会東海支部と界面科学部会が共催する東海地区の界面科学に関する基礎講座として定着しています。講演では、時折、演示実験を交えることが伝統的で、今年も、乳化の実験などが行われ好評でした。最後に開催された懇談会では、軽く飲み交わしながら、講師の先生と参加者の交流があり、質問や名刺交換が行われていました。今後も、12月の第一金曜日にこの会を開催して行きたいと思っていますので、若手研究者の皆さん、新たに界面科学の知識を必要とされる方、是非ご参加ください。

【プログラム】

1.「界面活性剤概論: 界面活性剤の機能と用途」 名古屋市立大学大学院 薬学研究科 宮田 勇 氏

界面活性剤(surfactant)は、その分子内に疎水基(hydrophobic group)と親水基(hydrophilic group)をもつ両親媒性物質(amphiphilic substance)の総称である。界面活性剤の歴史、現代の製造方法、応用分野および界面活性剤の機能を界面化学現象と合わせて解説する。

2.「乳化の基礎」 日本メナード化粧品株式会社 総合研究所 坂 貞徳 氏

乳化は互いに混ざり合わない水と油を混ぜ合わせることにより高機能材料として用いる技術であり、医薬品、食品、化粧品など広範囲の産業分野に汎用されている。ここでは乳化の利用・理解について基礎となる乳化の種類及び調製法、乳化剤の選択、乳化の安定性などについて触れ、乳化と異なり熱力学的に安定な系である可溶化との比較についても解説する。

3.「土木建築用界面活性剤の役割と特性」 竹本油脂株式会社 第三事業部 研究開発部 木之下 光男 氏

土木建築用途向けの機能付与剤として界面活性剤が大きな役割を果している。コンクリート用の高性能減水剤や地盤改良用の流動化剤として水溶性ポリカルボン酸系高分子活性剤、或いはその他のアニオン系や非イオン系活性剤の適用が、高強度や高耐久の水硬性材料を製造するためのキーテクノロジーとなっている。ここでは基本的な原理、化学構造及び分散メカニズムについて解説し、適用例について紹介する。

4.「粒子分散の基本的な考え方~塗料における顔料分散を題材にして~」

日本ペイント株式会社 色彩技術研究所 小林 敏勝 氏

粒子分散系の製造は界面科学が深く関与する重要な分野の一つである。塗料工業では顔料という着色した粒子径が数十nm~数十μmの粒子をビヒクル中に分散させて用いており、分散工程は塗料製造プロセス中でも重要視されている。本講では、顔料分散を題材として、分散のための粒子表面性質評価、粒子への高分子吸着、粒子分散の単位過程、粒子のぬれと分散安定化、等について解説する。

5.「光による高分子の1次構造および高次構造の制御 ~光リビングラジカル重合による分子量の制御と光反応による自己組織化の制御~」 豊橋技術科学大学 工学部物質工学系 吉田 絵里 氏

ブロック共重合体に代表される高分子界面活性剤は、その機能や性能の点から分子量やセグメント構造が厳密に制御されたものであることが望ましい。光による構造制御は、環境的メリットだけでなく局所的な応用が可能であるという点でも重要である。本講演では、最近開発された、安定ラジカルを用いた光リビングラジカル重合による高分子の分子量制御と、光分解や光転位に誘発されるブロック共重合体の新規な自己組織化の制御について紹介する。

講演の途中で行われた講師の坂先生とのD相乳化の実験

講演後には参加者から鋭い質問がありました。