油化学界面科学部会九州地区では,例年,地区行事として標記セミナーとジョイントして講演会を開催している。これは油化学分野への学生の動機づけと,油化学分野で学位(修士・博士)を取得しようとする学生間の相互討論を行うことによる切磋琢磨を期待するものである。前者の目的のためには,油化学やコロイド・界面科学関係の研究者を招待して講演会を開いている。後者の目的のためには大学院生の研究発表(口頭およびポスター)を行っている。
本年度は,鹿児島大学(早川勝光・前田環)の世話により2004年12月4,5日の両日,福岡大学セミナーハウスで53名(教員14名;学生37名;講師2名)の参加により開かれた。大学院生による研究発表は8件の口頭発表と5件のポスター発表が行われた。プログラムの詳細は別項に示した。学生による発表のうち口頭発表では参加教員による質疑が多くなるが,ポスター発表においては会場の消灯時間に至るまで学生間の活発な討論がなされていた。2つの講演は九州大学薬学研究院の柴田先生による『Potential of Fluorocarbons in Lung Surfactant Therapy』と,新居浜高等工業専門学校の真鍋昌裕先生の『微分電導度法によるイオン定数の決定-ミセル溶液系を中心として』と題した講演が行われた。柴田先生の講演は,π-A曲線の基礎的なデータと蛍光顕微鏡の観察結果を結合して気液界面での混和性をしらべ,肺の呼吸作用との関連を明らかにしたものであった。真鍋先生の講演では,微分電導度という基本的な物理量の測定結果も,深い考察を加えることによって多くの情報を引き出すことができること示された。昨今のコロイド・界面科学の世界では高価な装置による観察が主流となっている感があるが,頭脳を用いることによって単純な測定からも見えない世界について多くの情報が引き出しうることを示した極めて教訓的なものであった。参加学生は,「来年も会いましょう」とのことばを交わしながら,正味一日の勉強会を終えたことでした。来年度は九州大学の柴田攻先生が世話される予定である。(報告:鹿児島大学 早川勝光)
平成16年度物理化学インターカレッジセミナー
兼油化学界面科学部会九州地区講演会プログラム
12月4日(土) | ||
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12:50~13:00 | 開会の挨拶 | (鹿児島大・理)早川勝光 |
13:00~14:00 | Potential of Fluorocarbons in Lung Surfactant Therapy | (九大院・薬) 柴田 攻 |
14:20~14:45 | ペプチドを用いた人工サーファクタントの開発 II.DPPC, PG, PA系について | (九大院・薬 M2) 原 広道 |
14:45~15:10 | 棘皮動物由来のスフィンゴ糖脂質-単離・精製および界面挙動- | (九大院・薬 M2) 丸田智紀 |
15:10~15:35 | 炭化フッ素カルボン酸/リン脂質(DMPE)の界面挙動 | (九大院・薬 M1) 横山宏樹 |
15:35~15:45 | 休憩 | |
15:45~16:10 | リン酸型ハイブリッド界面活性剤のミセル形成 | (福岡大・理 M2) 中島乃里子 |
16:10~16:35 | Intermolecular Interactions of Acridine dye and acylamino acid system | (鹿児島大・理 M2) Myint Thein TUN |
17:00~19:30 | 懇親会 | |
19:30~21:00 | ポスター発表 | |
アニオン性巨大ベシクル形成におよぼす塩類の影響 | (九州産業大・工 4年) 金子恭平 |
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棘皮動物由来ガングリオシド/生体関連脂質の単分子膜挙動 | (九大院・薬 M1) 保田和樹 |
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操作プローブ顕微鏡観察によるマイカ表面の腐植物質の形態学的研究 | (佐賀大・理工 M1) 川崎伸夫 |
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シリカ-界面活性剤複合体のナノ空間に溶解した色素の光物性 | (鹿児島大・理 M1) 田原一樹 |
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フミン酸の染色への応用 | (鹿児島大・理 M1) 松田美幸 |
12月5日(日) | ||
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9:00~10:00 | 微分電導度法によるイオン定数の決定-ミセル溶液系を中心として | (新居浜高専・工 真鍋昌裕) |
10:00~10:20 | 休憩 | |
10:20~10:45 | Fabrication of organic-inorganic nano-composites using ABC triblock copolymer and polyoxytungsten | (佐賀大・理工 D3)Anil Khanal |
10:45~11:10 | 二次元蛍光相関分光法 -タンパク質中のトリプトファン蛍光の解析- | (佐賀大・理工 M2)福間裕彰 |
11:10~11:35 | 溶液内における高分子系の特殊相互作用 | (佐賀大・理工 D1)蒲池将史 |
11:35~11:40 | 閉会の挨拶 | (鹿児島大・理) 前田 環 |