日本油化学会第55回年会 界面科学部会シンポジウム

副部会長 合谷祥一(香川大学農学部)

第55回年会における界面科学部会ランチョンシンポジウムは、年会初日9月7日(水)12:30からD会場で開催した。当初は12:00から開催の予定であったが、弁当が支給されないことが事前に判明し、参加者の昼食時間を考慮して、開始時間を30分後ろにずらして開催した。弁当が支給されないため、参加者が少数となることが危惧されたが、シンポジウム開始前には会場は満席となり、10脚ほどいすを追加したが、それでも足らず、立ち見の参加者も多く、参加者数は90名以上にのぼった(写真1)。
シンポジウムの司会は合谷が務め、資生堂グローバルイノベーションセンターの渡辺啓氏に「マイクロエマルションの相平衡制御よる化粧品の価値創出」という演題で講演していただいた。講演では、最初に、スキンケア化粧品と皮膚の共通性について解説された。皮膚では皮膚表面のNMF(天然保湿因子)、水、脂質が皮膚の健康状態を維持しており、スキンケア化粧品は同様に、保湿剤、水、油で構成されているということであった。次に、マイクロエマルション、転相温度乳化法及び転相乳化法についてわかりやすく解説された。次に、実際の製品であるメーク落としは使用時に水が混入して組成が変化するが、適切な組成の製品では水による希釈でもマイクロエマルション状態が維持されて高い洗浄力が発揮されることを、相図を用いてわかりやすく解説された。この中では、社内でも「乳化剤が多から洗浄力があるのだろう」という一般的な誤解を、相図を用いて解消したという逸話が興味深かった。さらに、高内水相W/Oエマルションの化粧品の開発事例についても三角相図を用いて解説された。この中では、単なる相図上の解説だけで無く、90%の水と9%の油を含む容器を用意され、これに乳化剤(1%)を加えて(写真2)単に振るだけで高内水相W/Oエマルションが調製されることを机上実験で示され(写真3)、大変わかりやすかった。
この様に明快で、示唆に富んだ講演であり、講演後会場からの質疑応答も活発であり、大変有意義なランチョンシンポジウムであった。

 

写真1

写真2

写真3